子宮頸がん
2023/02/15
近年日本では、子宮頸がんの患者数が増加しています。実は先進国で子宮頸がんの罹患率が上昇しているのは日本だけと言われています。
子宮頸がんの特徴や、日本ではなぜ子宮頸がんが増えているのか、その理由や対策についてお伝えします。
子宮とは
その役割と月経について
子宮は女性の骨盤内にある臓器です。
子宮は妊娠した時に胎児を育てる器官で筋肉でできており、内部は子宮内膜と呼ばれる粘膜で覆われています。
子宮内膜は、卵巣から分泌されるエストロゲンという女性ホルモンの作用を受けて分厚くなり、妊娠しなければ剥がれ落ちます。これが「月経」です。月経は通常閉経するまで4週間の間隔で繰り返されます。
子宮頸がん
年間約1.1万人が罹患し、2900人が死亡
子宮がんには、子宮の上部にできる「子宮体がん」と、下部にできる「子宮頸がん」があります。中でも、子宮頸がんは近年若い女性に急増しており、20代後半から増加して40代で発症のピークを迎えます。妊娠・出産を迎える世代に多く発症するため「マザーキラー」とも呼ばれています。
子宮頸がんの進行スピードは早くないものの、初期の段階では症状がほとんどありません。
子宮頸がんの原因
HPV感染
子宮頸がんの95〜99%は、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が関連しています。HPVには100種類以上の型(タイプ)があり、一部の型が、がん化することが分かっています。
HPVは性交渉によって感染するウイルスで、50%以上の女性が生涯で一度は感染すると言われています。多くの場合、感染しても自己の免疫力によって排除されますが、排除されずに長期間感染した状態が続くと子宮頸がんを発症する危険性が高くなります。子宮頸がんは、正常な状態からすぐにがんになるのではなく、「異形成」と言われる、がんの前の状態を何年も経てからがんになります。
子宮頸がんの予防
がん検診と子宮頸がんワクチン
子宮頸がん検診
子宮頸がんは、がんの前の状態である異形成や早期の段階では症状がありません。不正出血や下腹部痛等の症状が出る頃には、がんが進行してしまっていることが多いです。
そのため、症状がなくても定期的にがん検診を受け、早期発見することが大切です。
厚生労働省の指針でも、20歳以上の女性は2年に1回子宮頸がん検診を受けることが定められています。ほとんどの市町村では、がん検診の費用を公費で負担しているため、一部の自己負担で受けることができるのですが、日本の子宮がん検診受診率は、他の先進国と比べて著しく低いのです。これが他の先進国に比べて子宮頸がんが増えている原因と言えます。
子宮頸がんは、自覚症状が出にくいことや進行スピードも早くないことから、定期的ながん検診を受けることが大切です。
子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)
HPVワクチンは、100種類以上あるHPVのうち、子宮頸がんに進行しやすい型の感染を防ぐことができます。
これまでのワクチンでは子宮頸がんの60〜70%を予防できると考えられていましたが、2023年4月から更に多くの型に対応したワクチンが定期接種化され、80-90%予防効果が得られるようになりました。
HPVワクチンは、HPVに感染する前、つまり性交渉を経験する前に接種する必要があるため、小学校6年生〜高校1年相当の女の子が定期接種の対象となっています。
日本では2013年から定期接種化されましたが、副反応についての適切な情報提供ができないといった理由から、積極的な接種の推奨が中止されていました。しかしその後、安全性について特段の懸念がないと認められたことで、2021年には積極的接種の推奨が再開されています。
ただ、厚生労働省が公表している定期予防接種実施者数では、日本のHPVワクチン接種率は2019年時点で4%以下であり、他の先進国が40%〜85%程度であることに比べ、非常に低い状況です。
子宮頸がんワクチン
キャッチアップ接種
HPVワクチンの積極的接種が中止されていた期間に接種を受けられなかった方へ、改めて接種の機会を提供するため、「キャッチアップ接種」が実施されています。
【キャッチアップ接種の対象者】
■平成9年度生まれ〜平成17年度生まれ
(1997年4月2日〜2007年4月1日)の女性
■過去にHPVワクチンの接種を合計3回受けていない女性
【キャッチアップ接種が受けられる期間】
■2025年3月まで
この期間は、公費でワクチンを接種できるため、該当する方はぜひワクチン接種を受けましょう。
当院でも子宮頸がんワクチンの接種を実施していますので、ご希望の方は公式LINEの「相談・お問い合わせ」より、ご予約いただけます。
※メッセージに、「子宮頸がんワクチン希望」と送信してくださいね。