他者と分かり合うのは無理かもしれない
2023/12/21
他者と分かり合えるという幻想
「全ての悩みは人間関係に集約される」という言葉があるように、出会う人達との関係性は、互いの人生に大きな影響を与えます。
その中で私達は、相手のことを理解しようと努めたり、自分のことを理解してもらおうとしますよね。
しかし、どれほど相手のことを学び、共感力を身につけても、他者のことを全て理解し、完全に分かり合うということは、おそらく出来ません。
もちろん、分かり合おうと歩み寄ることは可能ですし、そのための歩み寄りは非常に重要です!
「分かり合えないなんて、そんなことはない。人はみんな分かり合えるはずなんだ」という声も挙がるでしょう。
そのような場合は、「人は分かり合えなければいけない」というような価値観が強いのかもしれません。
そのような価値観が強い人は、人と分かり合えないことは悲しいことだ、あってはいけないことだと感じられるのだと思います。
事実として、人は自分以外の誰かの人生を代わりに生きることも、他者の全ての経験や感情を追体験することも出来ません。
私達は、それぞれが異なる環境で育ち、異なる特性や個性を持った、一人ひとり異なる人間です。
そのため、部分的に分かり合うことは出来ても、全てを100%分かり合うことは難しくなります。
例えば、病気で予後は数か月と告知を受け、自分のことが自分で出来なくなってしまったとつらさを語る方を前にして、「そうですよね、あなたのつらさ分かりますよ」なんて言えるでしょうか。
戦争で人を殺してしまった人に、戦争経験のない人が「あなたの苦しみ、私も分かりますよ」と言えるでしょうか。
こうした場合、「同じ苦しみを経験したわけでもないあなたに、自分の苦しみの何が分かるのか」と問われることもあるでしょう。
では、自分のことを相手にわかってもらおうとする場合はどうでしょう。
相手が自分とは全く異なる考え方や価値観や持っており、自分が正しいと信じ込んでいれば、あなたのことを分かろうと歩み寄るのは難しいかもしれまん。
また、あなたの心の内や思考の全てを知る能力者でもない限り、あなたのことをいつでも何でも分かるという人はいないでしょう。
それでも、誰かが必ず私のことを全てわかってくれるはず、と他者に期待を持ってしまうこともあるかもしれません。
そのような期待が高まると、他者に依存的になり、分かってもらえなかっと感じる時には孤独感が高まってしまいます。
もちろん、こうした極端な例に限らず、どのような人との関わりの中であっても、同じことが言えます。
分かるつもりになって発した言葉や態度が、他者を苦しめることがあります。
自分のことを他者に分かって欲しいと期待することで、自分が苦しむこともあるのです。
だからこそ、必ずしも分かり合えなくても、それで良いと思えることが大事になってきます。
そもそも、分かり合えないということは、決して悪いことでも、悲しいことでもありません。
分かり合えないからこそ、多様性を受け入れることを学ぶことが出来ます。
分かり合えないからこそ、知りたいという気持ちが生まれます。
分かり合えないからこそ、様々な工夫や新たな発想が生まれます。
これは人の成長や発展にとって、大切なことではないでしょうか。
分かり合えなくても、認め合える
分かり合えるはずだと思うと、「話せば分かる」という理想をかざして突き進み、関係性の中に葛藤や苦しみが生まれることがあります。
そのため、まずは分かり合えなくても良いのだと、一度潔く諦めることも大切だとお伝えしました。
ここで誤解しないで頂きたいのは、分かり合えないからと言って、相手を否定したり、敵対する必要はないということです。
人はそれぞれ違いがありますので、あなたと分かり合えない人がいるのは自然なことですよね。
しかし、人は自分の持つ情報や価値観、意見、常識、ルールなどを正しいものと思い込んでしまいがちです。
そうした思い込みを持つことによって、自分とは異なる分かり合えない人達は正しくないとか、間違っていると無意識に判断してしまい、偏見や対立が生じやすくなります。
そのため、この正しい/正しくない、良い/悪いといった価値判断を手放すことが求められます。
単に「そういう違いもあるんだな」と素直に受けとめていくことで、多様性を認めながら活かす方向へ向かうことが出来るようになるからです。
特にこれからの時代は、今までの常識や価値観も大きく変化し、その変化が加速していく時代だと言われています。
そうした時代を生きていくために、今は正しい/正しくない、良い/悪いといった価値判断を手放す絶好のチャンスとも言えるのかもしれません。
繰り返しとなりますが、私達は違いがあって分かり合えないことがあったとしても、その違いを受けとめ、認め合っていくことは出来ます。
この世界に、絶対に正しい価値観や意見など存在しないのですから、一つの考え方や在り方に固執する必要はないのです。
もし、分かり合えないと感じる相手がいるのなら、相手に分からせようとするのでもなく、分かってもらおうと努力するのでもなく、価値判断を挟まずに、互いの違いを認めることを意識してみましょう!