【糖質番外編】人は甘味に恋をする あなたの脳は砂糖にゾッコン?
2024/10/10
管理栄養士の豆知識
バランスのお話。健康的な生活を送るにはバランスが大事。食事運動睡眠の1日の生活バランス、朝昼夕の食事バランス、糖質脂質タンパク質の食内容のバランス。当たり前のことですが、毎日継続することが難しいんですよね。まずは出来ることからバランスを意識していきましょう。
皆さん、初めまして。
管理栄養士の石田と申します。
人は甘味に恋をする あなたの脳は砂糖にゾッコン?
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人は砂糖を口にすれば、甘味を感じます。
甘味はエネルギーの源を摂取しているという信号として脳で解釈され”おいしい”と感じます。
人はおいしいという快感を生じることによって、食べることを促進します。
砂糖を口にし、甘味を感じると脳内に存在するβ-エンドルフィンという物質が分泌されます。
β-エンドルフィンは脳内麻薬ともいわれ、一旦くせになるとやみつきにさせる作用があります。
ケーキなどの甘いものが手放せなくなるのはこの作用効果によるのです。
脳の摂食促進の流れとして、β-エンドルフィンという快感物質が出されることはすでに述べましたが、
その次の段階として、脳の報酬系という部分が働き、ドーパミンという物質が分泌されます。
ドーパミンの働きによりおいしいものを食べたいという欲求が高まり、それを口にして快感が得られるとともに、さらなる食欲がかきたてられます。
報酬系を通った情報は、脳にある視床下部外側野(摂食中枢)に到達し、オレキシンという摂食促進物質を分泌します。この物質は、特に甘いものをより多く摂取させようと働き、消化管の活動を活発にします。
おいしそうなものや自分の好物を見たときに食欲がわき、おなかがぐーと鳴くのもオレキシンが関与しています。
下の図は、食行動に関わる脳内物質の相互作用についてまとめたものです。
摂食中枢の活動のあとは、満腹中枢が活動して、摂食行動は停止するはずですが、甘くておいしい味覚情報、欲求や摂食に関わる脳内物質をお互いに刺激しあい、満腹中枢になかなか情報が到達しません。つまり、ついつい食べ過ぎてしまうのです。
砂糖から感じる甘味は脳内物質の生理作用により、魅惑の快感と食欲を引き起こします。
砂糖自身は毒物でも危険物でもありませんが、歯止めがきかなくなると、過剰摂取が問題となります。
甘味を有する魅力的な食べ物を避けるのは難しく、砂糖のない食生活は考えられません。自制心を持って、うまく砂糖の魅力と付き合うことが大切です。
◎ちょっと箸休めに
ネコは甘味を感じない?!
ネコを飼っている人でも案外気づいていないのですが、ネコは甘味を感じません。
人や生き物は舌の味蕾にある味細胞が、味を有する物質と結びつくことによって味を感じることができます。
しかし、ネコは甘味を感じる受容体がうまく働かず、砂糖などの甘味物質が結合できないので、甘味を感じることができないのです。
「うちの猫はケーキを食べるよ」という人もいると思いますが、おそらく、甘味以外の炭水化物や油脂などの味を感じて食べているのだと思います。
参考
・楽しく学べる味覚生理学―味覚と食行動のサイエンス 建帛社 山本隆
・日本顎口腔機能学会雑誌 18(2):107-114,2012 山本隆
・化学と生物 公益社団法人日本農芸化学会Vol.45:21-26,2007 山本隆