みんなと同じだと安心…に潜む罠
2023/08/31
みんなと同じであることへの執着
人は一人では生きていけませんので、繋がりが断たれ、孤独になることを怖れる傾向があります。
「自分だけではなかった、みんなも同じなんだ」と思えることが安心感に繋がり、その安心感を得るために、みんなと同じでありたいという一体欲が生まれます。
私達が流行に敏感になって、一体感の中にひたろうとするのも、仲間を見つけるために集団の中に入っていくことも、同じ感動や興奮を共有したくて大勢でスポーツ観戦をすることも同じです。
その根底には、みんなと同じであることで安心感を得たい、裏を返せば孤独を怖れる気持ちが潜んでいるのです。
こうした怖れに基づいた一体欲は、誰しも持っています。
しかし、この欲が過度になる、つまり執着してしまうことが、生きづらさの原因になることがあります。
無理に人にあわせようとして、自分を閉じ込めるようになるからです。
同じでないと、認められないのではないか
同じでないと、変わり者と見られてしまうのではないか
同じでないと、不当な扱いを受けるのではないか
同じでないと、孤立してしまうのではないか
このような怖れが強くなると、他者と同じように考え、同じように行動し、同じような服装をし、自分が皆と違っていないかを見張るようになってしまいます。
みんなと同じように振舞っていれば安心なので、自分の考えや個性を大切にすることが少なくなり、深く考えずにただ同調するようになります。
これでは、みんな違う人として生まれてきた意味もなく、自分の人生の生き甲斐を感じられなくなっても当然ですよね。
反対に、同じであることに強い抵抗を示し、頑なに自分のやり方にこだわったり、人と同じことはしたくないと反対の行動をとり続ける人もいます。
しかし、これもまたただの執着でしかありません。
自分の気持ちに従っているのではなく、他者の存在を基準に振り回されているだけということが分かりますよね。
大切なことは、怖れからくる執着に気付くこと、そしてそれに振り回されないことです。
流行にとても敏感、常に人と居たがる、人と違うことが出来ないという人は、自分の内側にある怖れをしっかり見てあげることから始めましょう。
みんなと違う人を受け入れられない
他者との一体欲が強く、執着してしまうと、自分の言動を見張るだけでなく、他者の言動も見張るようになってきます。
「みんなと違う人はおかしい、異常な存在だ」という基準を持つことになるため、他者にも同じように当てはめて考えるようになるのです。
すると、この人は自分達と同じだろうか、自分達の一体感や和を乱す人ではないか、そんな疑いが無意識に生まれてきます。
違うことが異常であるかのように思えてしまうため、「この人はおかしい」「普通じゃない変な人」とレッテルを貼るようになるのです。
程度の差はあれ、こうした思いは誰しも経験するものですよね。
人の見た目、性格、行動、考え方などに大きな差があると、ついつい気になって「おかしい」「病気なんじゃないかしら」なんて思ってしまう…。
けれど、それは他者がおかしいのではないのかもしれません。
自分の中にある、人と違うことを怖れる気持ちから生まれた「一体性への執着」、これこそが「おかしさ」を感じさせる原因となります。
こうした思いに疑問を持たないまま過ごすと、偏見、差別、不毛な対立などに繋がりやすくなります。
繰り返しになりますが、人は十人十色と言われるように、それぞれが異なる特徴を持っています。
違うことが当たり前なのです。
違っているからこそ相互に補うことができ、様々なことを成し遂げられます。
会社や学校や社会でもそうですよね。
違う視点があるからこそ発想が広がり、得意や苦手なことが違うからこそ支えあえる。
私達は違いがあるからこそ、組み合わさって一体となることができるのです。