【脂質8】卵の謎に迫る
2024/11/11
管理栄養士の豆知識
チョコレートのエネルギー量はピンキリです。例えば一口チョコレートは1個あたりのカロリーが約30kcalですが、有名チョコレート店のチョコは1個約100kcalのものもあります。チョコレート一つとっても選ぶものによって摂取エネルギーが変わってきますので、間食をする時は栄養成分をしっかり確認した上で200kcal程度のものを選ぶようにしましょう。
卵を食べるとコレステロール値が上がるという話を聞いた事がありませんか?
確かに卵をよく食べるとコレステロール値が上がるのは事実です。ただ、卵はそれ以前に完全栄養食と言われ、栄養価が高かったり、手軽に豊富なタンパク質が取れたりと食べることによるメリットが多いのです!
今回は卵について紹介します。
コレステロールとは?
血液中のコレステロールと食品中のコレステロールは同じものではありません。
食品に含まれるコレステロールは卵に限らず、ほぼ全ての動物性食品に含まれています。
さらに高LDLコレステロール血症に関与する主な栄養素は飽和脂肪酸とコレステロールです。
【データ1】
佐々木敏のデータ栄養学のすすめ
①卵を食べたらコレステロール値が上がるのか?(上図)
★卵をたくさん食べるほどLDLが上がり、1日2個くらいまでならLDLへの影響は事実上ほとんどないと言えます。
②コレステロール値が高いと心筋梗塞を発症しやすいか?
★血中総コレステロール値が高くなるほど心筋梗塞の死亡率が上がります。
心筋梗塞の死亡率そのものは高齢者の方が高いですが、総コレステロールの影響が強いのは若い人の方です。卵をたくさん食べれば心筋梗塞を起こしやすいと思われるかもしれないですが、習慣的な卵の摂取量とその後の心筋梗塞の発症率を調べた研究の結果、卵の摂取量と心筋梗塞の発症率との間にほとんど関連はないという研究結果もあります。
③なぜ研究結果が違うのか?
一致しない理由としては高コレステロール血症の原因はコレステロールの過剰摂取だけでなく、心筋梗塞の原因は高コレステロール血症だけではないからです。食事では飽和脂肪酸の過剰摂取をはじめに考えないといけないですし、喫煙や高血圧、肥満、運動不足も大きく影響するので、それだけが原因と言い切れないのでしょう。
【データ2】
厚生労働省より
【卵の摂取量と動脈硬化性疾患罹患との関連を調べた研究】
<動脈硬化関連疾患>
・卵の摂取量と冠動脈疾患及び脳卒中罹患との関連は認められていない
・日本人を対象にしたコホート研究でも、卵の摂取量と虚血性心疾患や脳卒中による死亡率との関連はない
・1日に卵を 2 個以上摂取した群とほとんど摂取しない群との死亡率を比べても有意な差は認められていない
<糖尿病>
・卵の摂取量と冠動脈疾患罹患との関連は認められていない
・横断的な卵の摂取量と糖尿病有病率との関連も認められていない
【総コレステロール摂取量と各疾患の死亡率との関連を調べた日本人を対象にした研究】
ハワイ在住日系中年男性(45~68 歳)
<虚血性心疾患>
・食事性コレステロール摂取量と虚血性心疾患死亡率との間に有意な正の相関を認め、
325 mg/1,000 kcal 以上の群で虚血性心疾患死亡率の増加を認めている
・ただし 飽和脂肪酸摂取量で調整されていないため、コレステロール摂取自体が原因ではなく、同時に摂取する飽和脂肪酸摂取量が影響している可能性がある
<がん>
・女性において、卵を2 個/日以上摂取する群(総対象者の上位 1.3%)では卵を 1 個/日の群に比べ有意ではないが、がん死亡の相対危険が約 2 倍になっていた
・欧米の研究では、コレステロール摂取量と卵巣がんや子宮内膜がんに正の関連が認められている
・コレステロール摂取量最大四分位の群(511 mg/日以上)は、コレステロール摂取量最小四分位の群(156 mg/日以下)と比較して、肝硬変又は肝がんになる可能性が有意に高いことが示されている
がんとの関連について、コレステロールの摂取量は低めに抑えることが好ましいものと考えられるものの十分な科学的根拠が得られなかったため、目標量の算定はまだありません。
【結果】1日に何個までなら食べていいの?
1日1個半くらいまでなら心配はない
・コレステロールをたくさんとれば血中LDLコレステロールは上がる
・習慣的な卵の摂取量と心筋梗塞の発症率との間にはほとんど関連が見られない
・それ以上については推測になりますができるだけ控えておくほうが良さそう
2個以上の摂取に関しては、心筋梗塞の発症リスクをどの程度抑えたいかによるかと思います。参考までに水溶性食物繊維はコレステロールを吸着し、体外へ排出する働きがあるので、一緒に摂取することがお勧めです。